Microsoft フライト・シミュレータ

本プロジェクトでは、品質基準の変動やクライアントの優先事項の変化、そしてMicrosoft側にアートリーダーが不在で明確な指示が得られないなど、さまざまな課題がありました。トレーラー用の追加アセット（船やスパイスクローラーハーベスターなど）の依頼により、リソースの再配分も必要となりました。フィードバックの遅延や要件の不明確さが原因で制作に遅れや手戻りが発生し、チームの士気やスケジュールに影響を及ぼしました。また、プリプロダクション資料がCADデータからフォトシュート資料へと変更されたことで、一部のアセット制作に不確実性が生じました。これらの課題とクライアントからの対応遅延を踏まえ、円滑なコミュニケーションと制作遅延防止のために専任のリソースが必要であると判断しました。

これらの課題に対応するため、インドと米国のスタジオにまたがるチームを編成しました。フルタイムのプロジェクトマネージャー、アートスーパーバイザー、アートリードが指揮を執り、専任のレビュアー、アーティスト、FQA、バグ修正チームがサポートしています。作業範囲の決定から制作、バグ修正、アセットの統合まで一貫して責任を持ち、円滑な作業フローとコミュニケーションを実現しました。リサーチ担当者がリファレンスの収集と仕様書の作成を担当し、バグ修正チームは制作スケジュールに影響を与えずに問題解決を行いました。
各アセットに仕様書を導入することで制作工程を効率化。FQAチームはゲームエンジン上でのアセット検証を行い、クライアントの満足度に影響を及ぼす可能性のある機能的な問題を発見しました。バグを早期に解消することで、クライアントレビュー時のトラブルを最小限に抑えています。インドの制作チームは小規模なグループに分かれ、専任のプロジェクトマネージャー、リード、レビュアーが各グループのアセット制作とバグ修正を担当。これによりチームへの負担を抑えつつ、管理を円滑に進めています。

これらの施策による成果は以下の通りです。

2022年1月のプロジェクト開始以来、ラクシャのチームは世界各地の複数のスタジオで12名から52名へと成長しました。複雑かつ変化し続ける要求にも対応しながら、高品質なアセットを常に期日通りに納品しています。ゲーム内には「Local Legend Series」のアセットを5点導入し、そのうち3点は完全に自社制作で成功させました。現在は20点以上のアセットを新たな品質基準に沿ってアップグレードしています。こうした取り組みが評価され、Microsoftからの信頼を得ることができ、Microsoft Flight Simulatorのアニメーション制作も任されています。